山川菊栄生誕135年・2025年を振り返って

1890年に生まれた山川菊栄がもし生きていたら、135歳となっていた2025年も暮れようとしています。

35歳のとき、『報知新聞』紙上に家制度の廃止から労働市場における性差別の解消要求を網羅した「無産政党と婦人の要求」を連載しました。そして、所属していた政治研究会神戸支部婦人部を通じて「婦人の特殊要求について」として、政治研究会本部に綱領の修正を要求しました。また、左派労働運動の女性活動家たちが集う日本労働組合評議会全国婦人部協議会で「婦人部テーゼ」を起草し、採択されました。今年は、それから100年という節目でもありました。これに関連して、5月に出た平地一郎さんの論考にとても感銘を受けました。記念会にも送っていただいています。
平地一郎「婦人の特集要求から100年」(月刊『社会主義』2025年5月号)
http://www.kyokai.gr.jp/syakaisyugi2505.html


今年のいくつかのトピックを振り返ってみると、昨年に引き続き、3月にWikigap in Kanagawaが神奈川県立図書館で開催され、Wikipediaの山川菊栄の日本語ページをはじめ、神奈川ゆかりの女性たちの項目が充実していきました。山川菊栄の外国語版のページでは、昨年3月には、英語はもとより、中国語、韓国語、ロシア語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語、カタル―ニヤ語、インドネシア語、南インド・マラヤーラム語版がありましたが、現在、アラビア語やフィリピンの中央で話されているビコール語のページが新たにうまれています。また、「赤爛会」はベンガル語のページも作成されています。

4月には、昨年、国立公文書館に山川菊栄記念会から寄贈した、菊栄旧蔵の労働省婦人少年局作成資料65点について、同館のデータベース搭載と公開が始まりました。蔵書印や本人の書き込みのある唯一無二も資料です。現在、「新規公表」のファイルのなかに、ほかの3つの文書群とともに表示されており、「資料群詳細」として、資料来歴や、神奈川県立図書館に山川菊栄文庫があることも紹介されています。保管場所は東京竹橋の本館ですので、事前予約なく請求手続きを行えば閲覧することができます。


7月には、藤沢の読書会「菊栄カフェ」が第10回を迎えました。会場のBookyさんの御理解御協力もあって、『わが住む村』を地元村岡で読み続け、熱心なファンが定着してきました。Bookyさんの棚で記念会関連の出版物も手に取ってご覧いただけるようになっており、まとめて買ってくださる方も現れました。

また、冒頭に触れた「婦人の特殊要求について」と「婦人部テーゼ」を高く評価され、山川菊栄の跡を継ぐように女性労働研究に邁進された、記念会の世話人でもあった竹中恵美子さんが7月鬼籍に入られました。山川菊栄生誕100年記念のシンポジウムでの講演は、竹中恵美子著作集7の「現代フェミニズムと労働論」に、第3章「 山川菊栄におけるマルクス主義フェミニズム」として収録されています。この講演の中で竹中さんは、

「私が菊栄氏に深い思いをよせ、あるいは心酔いたしますのは、一つは、非常に優れた理論家であると同時に、働く女性に対して限りなく熱いまなざしを持った情熱家であった、という点にあります。」

と述べられています。この言葉について、これは山川菊栄のことであり、竹中恵美子さんご自身のことだと「竹中恵美子さんを偲ぶ会」で紹介させていただきました。

10月には、藤沢の旧居近くにあった村岡公民館の老朽化に伴い、新しい「村岡市民センター」が地域福祉機能を伴ってオープン。待ちにまった市民のみなさんの熱気のなか、山川菊栄記念会で制作した、『わが住む村』と山川菊栄を紹介するパネルをご披露することができました。展示パネルは1階の休憩室のコーナー近くに掲示され、湘南うずら園経営のことや夫・均とともに農業にいそしんだ姿、そして最晩年にNHKのインタービューを受けたことなどを伝えています。ここに至る、地元のみなさまの応援と御理解御協力に改めて感謝申し上げます。

神奈川県立図書館は、現在新収蔵庫の整備の最終盤にきていますが、山川菊栄文庫の再開を首を長くしてまっている方が大勢います。そのようななか、図書館の方々も内部工事と移転準備の傍ら、山川菊栄の生誕135年関連イベントとしてパネル展示と謎解きの企画実施をしてくださいました。パネルは記念会が生誕120年の時に制作し(一部、今年改稿。追加)寄託しているもので、若い司書さんを中心にパネル展示だけでなく、図書館のいろいろな部署と協力して、本棚や検索パソコンをめぐっていく斬新な謎解きに挑戦していくというイベントが加えられました。山川菊栄をまだ知らない人を含めて、いろいろな人々が山川菊栄とその仕事に親しむ機会となり、とても感銘を受けました。神奈川県立図書館の関係の皆様に改めて感謝申し上げます。村岡市民センターとともに、記念会だけでは不可能なアウトリーチとして、また次の世代に山川菊栄を伝えていくという点でも大きな意味をもったイベントでした。

山川菊栄の誕生月、11月には江東の女性史研究会のみなさんの企画により、江東区主催「いろどりフォーラム2025男女共同参画フォーラム」の一環として、ドキュメンタリー映画「姉妹よ、まずかく疑うことを習え」の上映と記念会の事務局長山田敬子の解説がパルシティ江東で行われました。1999年にドメス出版から出された『江東に生きた女性たち』(完売)を編纂した江東区女性史編集委員会の解散後も共同学習を続け、息の長い活動をしている有志のグループが「江東の女性史研究会」です。

今年の特徴として、海外での複数の翻訳企画から著作権等の照会がありました。数多くの翻訳作品を残した山川菊栄ですが、いよいよ21世紀にその国際性が発揮されていくと思われます。来年以降、翻訳出版の知らせと評価が届くことを心から楽しみにしています。




竹中恵美子さんを偲ぶ会に参列して


10月11日に大阪ドーンセンターで、山川菊栄記念会で活躍された女性労働研究者の竹中恵美子さん(7月1日逝去、享年95)を偲ぶ会が開催されました。同じ日の午前には、「第56回大阪社会運動物故者顕彰・追悼式」が行われ、竹中さんもおつれあいの姜在彦さんと並んで顕彰されました。


大阪をフィールドに広く女性の活動に関わってこられた竹中さんらしく偲ぶ会の実行委員会は、「高齢社会をよくする女性の会・大坂」「フォーラム労働・社会政策・ジェンダー」「一般財団法人大阪府男女共同参画推進財団」「一般財団法人大阪いきいき財団」の4団体、協力団体には「あい女性会議大阪」「認定NPO法人ウイメンズアクションネットワーク」「公益財団法人大阪社会運動エル・ライブラリー」「公益財団法人大阪YWCA」「ふぇみん大阪」「部落解放同盟大阪府連合会女性部」とが連なり、その活動の広さと影響力の大きさを物語っていました。


参加者は80名ほどでしたが、お世話になった方々の思いあふれるスピーチが行われ続きました。記念会からは事務局長の山田が選考委員・世話人になっていただいていたこと、生誕100年の時、竹中さんが話された「保護と平等・対立の構造を斬る~山川菊栄の女性労働論」と「日本におけるマルクス主義フェミニズムの源流~山川菊栄の今日的意義」の二つが、山川菊栄研究の礎になる功績だと紹介しました。このなかで、竹中さんは「私が菊栄氏に深い思いをよせ、あるいは心酔いたしますのは、一つは、非常に優れた理論家であると同時に、働く女性に対して限りなく熱いまなざしを持った情熱家であった、という点にあります。」と述べられています。これこそまさに、竹中さんそのものではないかと思いますうとお話ししました。また、15年前の山川菊栄のドキュメンタリー映画「姉妹よ、まずかく疑うことを習え 山川菊栄の思想と活動」への出演のことも紹介もしました。偲ぶ会の報告集は12月にでるとのことでした。

竹中文庫は大阪ドーンセンターに入っており、著作や蔵書のほかに「自分史ノート」としてクリアファイルに年度ごとに様々な資料がきれいに整理されていることに感銘を受けました。また大学をお辞めになるときの記念文集のタイトルが「自転車とベレー帽」で竹中さんご自身でつけたとのことでしたが、ベレー帽をかぶってさっそうと大学に向かう竹中さんの姿を彷彿とさせ、この竹中文庫は、竹中ワールドを体感できる空間でもありました。

改めてご冥福をお祈りいたします。(山田敬子)

*追悼展「竹中恵美子文庫」(10月13日で終了しています)へのリンク https://www.jcross.com/exhibit/002701/

国立公文書館デジタルデータベースで山川菊栄旧蔵労働省婦人少年局資料が公開となりました

このほど、山川菊栄記念会から国立公文書館に寄贈した山川菊栄旧蔵の文書65件が、デジタルデータベースに搭載となり、検索可能となりました。初代労働省婦人少年局長として指揮をとった調査の報告書が主ですが、亡くなる年まで婦人少年局が送付を続けていたことを示す資料もあります。

女性官僚としては初の寄贈文書であり、所蔵は筑波の分館ではなく、東京北の丸(東西線竹橋駅)の国立公文書館本館となりましたので、閲覧申請でその場でどなたでもご覧になれます。

いくつかの文書には「山川蔵書印」が押されていたり書き込みもある、いわゆる本人の手択本となります。正誤表の数値を丁寧に書き写して正確性を保とうとしており、統計調査資料へのこだわりが見受けられるところもあります。

資料の来歴は、神奈川県立かながわ女性センターを経て神奈川県立図書館所蔵となっていましたが、重複本にあたるものについては先だっての取り決めにより、山川菊栄記念会が譲渡を受けたもので、それらを国立公文書館に寄贈したものです。経緯についても文書の詳細説明に書かれており、間違えられやすい労働省婦人少年局の「婦人労働課」、「婦人課」、「年少労働課」の3課の説明とともに、組織の変遷も合わせて記されています。

2年前からこのニュースでも報告してきた労働省婦人少年局資料の厚生労働省による譲渡事業の問題点、全国のどこに分散所蔵されたいったのか不明であることは残るままですが、記念会としては、今後も注視していきたいと思います。

国際女性デーのウィメンズマーチ2025年が3月8日(日)に開催されます。

恒例となりました。ウィメンズマーチが今年も渋谷で予定されており、山川菊栄記念会も賛同団体に加わり、応援しています。

 「ウィメンズマーチ東京2025声明」が冒頭に述べるように、何かしらこ
の行事の予告のように、この国の性差別に対する理解の低さとそれに起因するジェ
ンダー不平等を象徴するようなジェンダー平等や人権に関わる深刻なニュースが続きます。
 フジテレビの性被害問題はこの国のマスメディアがかかえる構造的な欠陥をあらわに
しつつ、労働組合の活性化によって内側からの改革のきざしもでてきているようです。
また、外務省による国連人権高等弁務官事務所への拠出金から女性差別撤廃委員
会を除くように、という通告は、女性差別撤廃条約の批准国である
先進国として実に恥ずかしい行動といわざるを得ません。内閣府の男女共同参画局
委員会は存在していてもこのような状況で機能に限界がみえる以上、政府から独立
した第三者委員会としての国内人権委員会、それもジェンダー平等の監視と勧告委
員会が必要だと、今さらながら痛感しています。

 年々国際女性デーのマーチへの参加団体も多様性をみせながら増えていると感じら
れるのは、女性の社会進出に伴い、それを阻む要素が一層明確になってきているか
らであり、女性自身が自らの生きづらさを言語化してつながってきていることを示すの
ではないでしょうか。参加団体はすでに50を超えているとのことです。 
 今年は午前に団体アピールイベント、午後から明るいなかでのマーチになります。集
合場所がいつもと異なりますが、渋谷でともに行動に加わりましょう。そして、国際女
性デーを「恒例の行事」にしていけない、一日で終わらせず、毎日の小さくても横のつ
ながりをもったアクションの継続と積み重ねが求められています。

*2025年3月8日(土)13:00集合・13:20出発
スタート:神宮通公園(北側)  午前中の集会は10時から東京ウィメンズプラザ・ホール(申し込み不要、参加無料)です。
詳細はこちらでご確認ください。https://womensmarchtokyo.wordpress.com/

インターネット上のジェンダーギャップを解消しよう!-WikiGap in Kanagawa 2025が山川菊栄☆生誕135年☆とともに開かれます。

WikiGap(ウィキギャップ)は、インターネット上の百科事典「ウィキペディア」の女性に関する記事を充実させ、インターネット上のジェンダーギャップ解消をめざす世界的な活動で、日本国内では2019年から東京、大阪、神奈川(横浜)で始まりました。
神奈川ではコロナ後も開催を続けて、今回で4回目となります。

桃の節句を機に、神奈川のWikiGapに参加してみませんか? 午前中は、生誕135年を迎えた山川菊栄のこの1年をホットな最新情報とともにお伝えするミニレクチャー、午後はワイワイガヤガヤ教えあい助け合いながら、Wikipediaの記事をまとめていきます。初心者の方も大歓迎です。  

主催:WikiGapかながわ実行委員会
共催:神奈川県立図書館 
後援:山川菊栄記念会
<ダウンロードできます>*チラシ *プレスリリース資料

◆日時:2025年3月2日(日) 10時00分から16時30分
◆場所:神奈川県立図書館 本館4階 学び⇔交流エリア
https://www.klnet.pref.kanagawa.jp/user…/access/yokohama/
◆定員:20名(先着順)
◆参加費:無料
◆申込み期間:2025年2月27日(木)まで
◆申し込み方法:こちらのフォームからお申し込みください。複数人で参加希望の場合、お手数ですがお一人ずつお申し込みください。https://forms.gle/DdV8amtoQR7UxxaAA
※FBイベントページへの参加表明のみでは申し込み扱いになりませんのでご注意ください。

◆問い合わせ: kipring アットマーク mcn.ne.jp (田子)

◆プログラム 9:30 受付
10:00 開会
ミニレクチャー
・WikiGapについて(WikiGapかながわ実行委員会)
・「☆生誕135年☆いま、もっと新しい山川菊栄を! ここ1年の新たな動きを中心に」(山川菊栄記念会・山口)


11:30-13:00 昼休み

13:00

ウィキペディアの編集方法について(WikiGapかながわ実行委員会・田子)
神奈川県立図書館の使い方・資料紹介(県立図書館)
調査・執筆

16:00 ふりかえり
16:30 閉会

◆ウィキペディアアカウントの事前取得について
ウィキペディアに記事を作成・投稿するためには、アカウントが必要です。お持ちでない方は、事前に取得のうえ、ご参加ください。
PCの場合、ウィキペディアのページ右上「アカウント作成」から。スマホの場合、左上のメニューの「ログイン」からアカウントの作成ができます。

◆持ち物(可能な方のみ。お持ちいただかなくてもご参加いただけます)
ノートパソコンもしくはタブレット端末、パソコンの電源ケーブル
※Wi-Fi環境あり

◆昼食について
会場(県立図書館本館4階学び⇔交流エリア)では、ご持参いただいた食事をとることができません。昼食は、次のいずれかの方法でお済ませください。昼食休憩は長めに90分確保します。

1)昼休み中に近隣の飲食店に行く(飲食店の多いエリアまでは片道徒歩10分程度かかります)
2)持参、あるいは近隣の売店・コンビニ等で調達し、県立図書館本館のリフレッシュエリア(飲食可能なスペース)を利用する。ただし休日のため混雑が予想され、空席が確保できない可能性あり。
3)会場近くにあるカフェ「chant」https://www.instagram.com/chant_yokohama/ を利用(ランチプレート1200円程度。席数が限られているため事前申し込み推奨。申し込みフォームにてお知らせください)

昨年と同様、席数に限りがありますので、お申し込みは早めにお願いします。

今年は山川菊栄の生誕135年です。どうぞよろしくお願いいたします。

あけましておめでとうございます。

2025年は、1890年11月3日に生まれた山川菊栄の生誕135年にあたる年となります。巷では昭和100年といってみたり、また戦後80年という節目ともいわれますが、明治、大正、昭和を生きた山川菊栄とともに、それらを横断しながらジェンダー平等の進展を見つめ、未来への一歩が刻まれるような年になればと思います。

この記念会ニュースは2022年に開始以来2年半を経過しました。

昨年のトピックを振り返ると、3月開催のWikigap in Kanagawaで山川菊栄にフォーカスした講演会が組まれました。Wikigapの活動のおかげでWikipageの山川菊栄もとても充実したものになりました。これに合わせて『資料部情報』で「山川菊栄の翻訳文献一覧表—原著とその作者にみる国際性」(ベータ版1.0)を公開しました。

4月に藤沢のBOOKYさんで行われたドキュメンタリー映画上映会を機として、5月から読書会が始まり、毎回10人前後の参加者を得て、「わが住む村」を地元で読みながら11月まで5回続きました。そして12月にはシェア書店BOOKYさんの一画に山川菊栄の棚が設けられました。小さな一歩ですが、山川菊栄が戦中戦後と生活した藤沢で、こうした活動がうまれたことは本当に大きなできごとです。運営関係者のみなさま、そしてこの記念会ニュースをみて、BOOKYさんに足を運んでくださったみなさまに改めて感謝申し上げます。次回1月11日に開催します。参加者を受け付けています。

なお、あい女性会議神奈川のメンバーを中心とした山川菊栄の読書会もほぼ月1回のペースで継続中です。すでに岩波文庫の山川菊栄評論集を読み終わり、『山川菊栄集 評論篇』(岩波書店)から選択した読み方で第1巻を終え、昨年末第2巻に入りました。

2月にはすてっぷ・とよなか男女共同参画推進センターで、山上千恵子監督も参加してのトークショーとともに、ドキュメンタリー映画「山川菊栄の思想と活動 姉妹よ、かく疑うことを習え」の上映がありました。3月には、杉並の「国際女性デーミモザまつり」に市川房枝と山川菊栄のパネル展示、5月に同じく杉並で「杉並女性団体連絡会」の読書会があり「自由社会における妻と母」『山川菊栄評論集』よりを輪読。つづく6月には千代田区男女共同参画センターでのパネル展(その後日比谷図書館でも展示)、9月の船橋市の男女共同参画フェスティバル、10月から開催の鴎外記念館企画展での山川夫妻のはがき展示(1月13日まで開催)と、国内各所でさまざまな企画があり、山川菊栄を取り上げていただきありがとうございました。船橋市では、山川菊栄記念会が作成したパネルA1版9枚の展示と、ドキュメンタリー映画の上映も行われました。

山川菊栄誕生月である11月には、日仏会館100周年記念の日仏シンポジウムで元ジュネーブ大学教授のピエール・F・スイリ氏により山川菊栄が大きく取り上げられました。1924年に菊栄が発表した「人種的偏見・性的偏見・階級的偏見」(『雄弁』1924年6月号)」がインターセクショナリティ(交差性)の先駆的な作品であることを大きくアピールされました。山川菊栄文庫には仏語辞書も入っており、彼女とフランスとの関係の探求は今後の新しい課題となることでしょう。

2024年は2月に赤松良子さん、3月に有賀夏紀さん、そして12月に岡部雅子さんと山川菊栄ゆかりの方々とのお別れの知らせが続きました。改めてこころからご冥福をお祈り申し上げます。

この一年のスタートにあたり、先人のみなさまの足跡を大切にしながら、山川菊栄についてさまざまな情報発信に努めていきたいと思う次第です。生誕135年関連のイベント企画がありましたら、お気軽に事務局までお問合せいただければ幸いです。また、こちらの記念会ニュースでも広報させていただきたく思います。どうぞよろしくお願いいたします。

菊栄カフェ読書会@藤沢からのお知らせ

11月17日に開催された、第5回菊栄カフェ・読書会の報告ですが、8名のみなさまのご参加がありました。会場のBOOKYさんにはいつものように御協力いただきありがとうございました。

 前半は、山川菊栄関連の話題提供・共有として、記念会サイトで公開している「山川菊栄記念館*資料部情報」を印刷したファイルなどのプリントアウトをBOOKYさんに来店した方が、いつでも読んでもらえるように、12月1日から新たにレンタルスペースの棚一つに置いていくことになりました。

また、日仏会館百周年記念日仏シンポジウム「フランスにおける40年の日本研究、これからは?」(11/14-15)二日目にあった「人種差別と植民地主義を再考する」の中で、ピエール=フランソワ・スイリ(元ジュネーブ大学教授)氏が、戦前の日本において、山川菊栄だけが、人種・性・階級の差別をあわせて論じていたと紹介されたとのことで、その根拠となる山川菊栄著「人種的偏見・性的偏見・階級的偏見」(『雄弁』1924年6月号掲載)について、朗読をつうじて共有しました。

 後半は、村岡公民館に掲示してある弥勒寺周辺の書き起こし地図の写真提供があり、みんなでみました。「山川均邸」などがかかれています。そのあと、「わが住む村」の続き(p27~p39)から「助郷の禍」「黒船来たる」を一龍斎春水さんの朗読で読み、引用と菊栄の文章の絶妙なバランスに気づかされました。

菊栄の本棚
BOOKYさんの棚「シェア型書店」をオープンしました。



12月1日からいよいよ、会場としているBOOKYさんの本棚をレンタルし、「山川菊栄記念会」書店をオープンしました。記念会の編集出版書籍をはじめ、菊栄の著作や、女性関連書籍を販売します。『わが住む村』岩波文庫の古本も何冊か置きましたので、お持ちでない方はここからお求め下さい。
このほか、菊栄資料のプリントアウトもこの棚に置いておきますので、BOOKYさんにぜひご来店くださって、手に取って読んでいただけたらと思います。
BOOKYさんの営業日・時間はこちらをご確認ください(金土日月営業です)。

*次回読書会は2025年1月11日(土曜日)14:00から開催です*
BOOKYさんで何か好きなものをオーダーしてくだされば、どなたでも参加できます。イスの用意がありますので、初めての方はご連絡いただければ幸いです。

*参考  文中の各種文献がダウンロードできるリンクをご紹介します。

・山川菊栄著「人種的偏見・性的偏見・階級的偏見」(『雄弁』1924年6月号掲載。)が読めるのは、

田中寿美子, 山川振作 編集『山川菊栄集』3,岩波書店,1982.4. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12144384/1/139

鈴木裕子 編『山川菊栄女性解放論集』2,岩波書店,1984.5. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12143124/1/45

・棚においてあるPDFのダウンロードができる場所:オープンアクセスでどなたでも自由にお読みいただけるようにしています。

山川菊栄記念会『資料部情報』https://yamakawakikue.org/archives_info/

山口順子「『山川菊栄文庫資料』(神奈川県立図書館蔵)のうち青山延寿出版関係史料概要について」補論で「覚書 幕末の水戸藩への道程」を書いています。(科研B-20H01319「維新政権期の木版刊行物に関する学際的研究およびオープンサイエンスの推進」2020年度~2023年度 研究代表・国文学研究資料館研究部・総合研究大学院大学 藤實久美子教授)の研究サイト内 からダウンロードできます

日本アメリカ史学会例会で「有賀夏紀さんを偲ぶ会」が開かれました。

この記念会ニュースでもお知らせしましたが、さる3月7日に亡くなられた有賀夏紀さん(山川菊栄賞選考委員、2022年から世話人)を偲んで、12月15日(日)に日本アメリカ史学会例会が専修大学神田キャンパスで開催されました。記念会からは事務局長山田敬子が山川菊栄賞受賞スピーチやドキュメンタリー映画『姉妹よ、かく疑うことを習え』シナリオの翻訳エピソードなどを交えながらありし日の有賀さんの思い出をお話し、記念会の活動をとても大切にし、また楽しんでおられた、その横顔を紹介しました。詳しいプログラムは同会サイトでご覧ください。

山川菊栄記念会の新しいリーフレット誕生と「名言エッセンス」(『資料部情報』第4号)発行のお知らせ

昨日6月29日に終了しました、山川菊栄誕生の地でもある東京・千代田区の男女共同参画センターMIW企画による、パネル展(「女子の学びを切り拓いた女性たち~小説『らんたん』の登場人物たち」)ですが、『らんたん』の作者柚木麻子さんの講演会「シスターフッドのこれまでとこれから」も22日に開催され、オフライン・オンラインともに大盛況でした。会場で講演会に参加しました。

柚木さんは、女性たちをめぐる環境の変化の中で、「シスターフッド」が受け入れられてきたことをまず指摘されました。一方、その中で感じ続けてきた、日本の女性に対する変わらない「ジェンダーバイアス」についてもたくさんのエピソードとともに言及、でもシスターフッドで、しかも自然体で、それを乗り越えていく道も示唆されました。講演は、テンポの良い柚木ワールド全開のお話を堪能することができました。また終了後、柚木さんと『らんたん』における山川菊栄について、個人的にお話をする機会を得ましたが、登場人物の中で山川菊栄が「一番人気」であることなどをお話してくださいました。

このイベントに合わせて、記念会では新しいリーフレットを作成しました。表に現代的課題に通じる名言の数々をセレクトして配置し、裏には34回にわたる山川菊栄賞受賞作品を二本の柱にして、山川菊栄の生涯とともに記念会について説明しています。こちらからPDFでダウンロードできます。自由に配布したり、表裏を横に並べてA3版のポスターとしてお使いいただけます。ぜひご利用ください。

また、この名言の解説をまとめた「山川菊栄の名言エッセンス」『資料部情報』第4号もアップロードしました。1918年~1972年まで10点の名言について最新研究とともに、解説をつけました。新出の文献「維新の申し子」(1972年)も紹介しています。

『生誕130周年記念シンポジウム「山川菊栄、いま新しい」記録集』のチラシもできています。記念会で購入希望を受け付けていますので、どうぞよろしくお願いいたします。

追悼・有賀夏紀さん

『アメリカ・フェミニズムの社会史』(勁草書房、1989年)で第8回山川菊栄賞を受賞され、のちに山川菊栄賞選考委員、2022年から世話人として活躍された埼玉大学名誉教授の有賀夏紀さんが闘病生活の末、去る3月7日に逝去されました。6月20日、偲ぶ会として山川菊栄記念会世話人会で集まりました。

有賀夏紀著『アメリカ・フェミニズムの社会史』
第8回山川菊栄受賞作『アメリカ・フェミニズムの社会史』(勁草書房、1989年)

有賀さんはかつてアメリカ学会会長も務められたほか、米国においてもアカデミズムのネットワークをたくさんおもちでした。2019年には、アメリカ芸術科学アカデミー外国人名誉会員にもなっています。

山川菊栄記念会の活動では、山川菊栄賞選定委員会での交流を気に入って大切にされていて、ともすれば議論で窮屈になりがちな会合の場をもちまえの明るさで盛り上げてくださいました。

山川菊栄のドキュメンタリー映画の翻訳もされていた語学力を、この記念会サイトの英語版で発揮していただくことになっていましたが、ご病気のため断念されたことは、さぞかし無念であったことかと推察されます。

改めて心からご冥福をお祈り申し上げますとともに、有賀さんの想いを継承しながら、このサイトの充実と情報発信に努めていきたいと思います。

*外部リンク:一橋大学ジェンダー社会科学研究センターサイトで、ありし日の有賀さんへのインタビュー動画が公開されています。