千代田区男女共同参画センターで企画展示「女子の学びを切り開いた女性たち」と講演会が開かれます

東京の営団地下鉄・九段下駅からほど近く、千代田区役所と同じビルの10階に千代田区男女共同参画センターMIW(みゅう)があります。

男女共同参画週間の企画として、柚木麻子(ゆずきあさこ)さん執筆の小説『らんたん』に描かれた人物を通じて女性の教育に尽力した人々を紹介する「女子の学びを切り拓いた女性たち~小説『らんたん』の登場人物から」展がMIW交流サロンで開催され、山川菊栄も登場予定です。(6月17日(月)~29日(土)まで、開館時間9:00~21:00、期間中の休館など詳しい情報はセンターサイトをご覧ください。)

この小説によって大正デモクラシーの女性群像と山川菊栄を知ったという若い人も少なくありませんが、作者の講演会「柚木麻子さんと考えるシスターフッドのこれまでとこれから」(6月22日(土)午後2時~3時30分も、保育サービスつきで対面とオンライン両方で参加者を募集中です。

男女共同参画週間とは、内閣府の男女共同参画推進本部が実施する啓発週間で毎年、1999年の 男女共同参画社会基本法の公布・施行日である6月23日からの1週間、29日までとなっています。山川菊栄が労働省婦人少年局長として始めた「婦人週間」(のちに「女性週間」と改称)は初の女性参政権行使を記念した4月10日から1週間でしたが、2000年にこの男女共同参画週間にその役目をバトンタッチしました。キャッチフレーズは全国から募集して決定され、今年度は「だれもがどれも選べる社会に」が2000件以上の応募のなかから選ばれました。

なお、千代田区と言えば、番町四丁目(現・九段北)が山川菊栄生誕の地、よく通ったという博文館の大橋邸に開設された私立大橋図書館(現・三康図書館)、文筆の道へとつながっていった「閨秀文学会」が開催されたユニバーサリスト教会は震災前九段中坂下に存在していました。ほかにも開学当時の女子英学塾(のちの津田英学塾)跡(現・英国大使館そば)、戦後に初代局長となる労働省婦人少年局の最初の事務室が置かれていた、近衛師団司令部庁舎(北の丸公園内、旧・東京国立近代美術館工芸館)など、ゆかりの地がたくさんあります。

このサイト内にゆかりの地マップもありますので、緑のきれいな季節にそうしたスポットを訪ねるウォークも合わせて楽しんではいかがでしょうか。

藤沢で山川菊栄の読書会が始まりました。

神奈川県藤沢の村岡は山川菊栄が均とともに移り住み「湘南うづら園」を経営し、それを閉じた後も終生住まい続けた土地です。当時、鎌倉郡村岡村といった、その村で人々からの聞きとりや厚生省研究所の統計資料も利用して著したのが『わが住む村』(1943年、三国書房)でした。この本を題材にしながら小さな読書会が始まりました。

気持ちよく晴れて初夏の光がまぶしい5月18日(土)の午後、4月にドキュメンタリー映画上映の行われたBOOKYさんに、藤沢在住を中心とする菊栄ファンが7名が集まり、『わが住む村』の読書感想と懇談で、2時間があっという間に過ぎました。

自宅があった村岡の公民館には「山川均宅」と書かれている大きな地図が掲げられていますが、初めて行った人はちょっと気が付きにくかったという声もあります。均の直筆と思われる端正な線と字でかかれた、当時の古地図を見つめながら、現在との変化に話題が集中。いまもこれはある、ここは変わった、との会話の中で、改めて、菊栄が歩いて聞き取りにまわった範囲の広さも浮き彫りになりました。宅地開発が進みすっかり風景が変わってしまっていても、地元とそこで暮らしやすい生活への想いを菊栄から引き継ぎたい、という熱気にあふれたこの読書会は、来月も『わが住む村』で続きます。

各自、私のいち推し「章」を語るというゆるい課題で、6月23日(日)14時から16時、BOOKYさんのおいしい飲み物やお菓子をそれぞれで注文しお支払いください。『わが住む村』の持参もお忘れなく。問い合わせは山川菊栄記念会にお願いします。

日程変更のお知らせはこちらのページに追記します。

「知」の巨人100人に選ばれた山川菊栄・山川均-そして戦前からの平凡社との関係

平凡社新書『近現代日本思想史「知」の巨人100人200冊』(2023年2月刊)表紙と帯

昨年の『文藝春秋』8月号特集、日本人100人に山川菊栄をフランス文学者鹿島茂氏が推してくださったことをこのニュースで書きました。それより少し前に刊行の、平凡社新書『近現代日本思想史「知」の巨人100人200冊』(2023年2月刊)にも、大正デモクラシーのなかで山川菊栄、山川均が選ばれています。監修は東京女子大学丸山昌男比較思想研究センターです。

知の巨人たちの著したそれぞれ代表的2冊も選ばれており、『おんな二代の記』と鈴木裕子編『山川菊栄 評論集』(岩波文庫)が藤野裕子さんによって推薦されています。山川均の2冊は『社会主義への道』と『山川均自伝』が選ばれており、同じく藤野さんによるものです。

100人のうち女性は5人だけで、平塚らいてう、山川のほか、高群逸枝、上野千鶴子さん、そして中根千枝さんの名前が見られます。

また、巻末にアーカイブ紹介があり神奈川県立図書館山川菊栄文庫も記されています。現在、図書館のOPAC検索できるようになっていますが、新収蔵庫改修工事のため検索はできても閲覧ができませんのでご注意ください。令和8年度以降予定の新収蔵庫オープン後には、山川菊栄記念会も協力して進めてきた日記や受領書簡などの公開も徐々に行われる予定です。

 この本で夫婦で選ばれたのは山川の二人だけですが、平凡社も山川夫妻ともにゆかりある出版社です。戦前では、赤い表紙が賛否を生んだ『社会思想全集』は文化学会が編集し、平凡社が出版しました。1928年刊の第11巻にベーベル著山川菊栄訳『婦人論』が入っています。保存機関の大変少ない付録の『社会思想月報』5号にはこの刊行の顛末が記されており、予告では山川均の「唯物論と経験批判論」だったが訳者の支障が起こったため、進行を中止し第5回配本の内容を変えて当初10月予定だった「婦人論」となった、とあります。「我国女流評論家」の第一人者として山川菊栄はベーベルの訳者として最適任者と紹介しています。また、戦後では代表作『おんな二代の記』が1972年に平凡社の東洋文庫に入りました。

推薦されている本のうち『おんな二代の記』(『山川菊栄集9巻』所収)、『社会主義への道』 (『山川均全集20巻』所収)『山川均自伝』は、いずれも国立国会図書館デジタルライブラリから個人配信でスマホでも読むことができます。夫婦で著作集をもつのは山川菊栄・均、そして岡本かの子・一平くらいでしょうか。

藤沢のBOOKYさんで開かれたイベントに参加しました。

4月7日に開かれた藤沢でのイベントに参加しました。箱根駅伝では重要なポイントの一つである遊行寺手前を大船方面に向かった柄沢橋というところに、BOOKYさんがありました。大きなリビングを改装した空間で、窓際の壁面にある本棚を自分の選書で埋めて売ることのできるシェア型ブックショップであり、居心地の良い素敵なカフェでもあります。山川菊栄のドキュメンタリー映画「姉妹よ、まずかく疑うことを習え」では、山川菊栄記念会代表だった故・井上輝子さん、婦人問題懇話会当初からの会員であり先ごろ急逝された赤松良子さんの映像に、改めてこの映画の記録的な意味が年々深くなっていくのを感じざるを得ませんでした。

藤沢市の広報で紹介されたことのある山川夫妻と、藤沢で書かれた戦時中の著書

参加者は男女20人ほどで、お父さんに連れられた小学5年生の男の子が最年少でした。記念会の山田事務局長が山川菊栄の人となりの話のあと、意見感想を交換しあいました。昭和10年から山川夫妻が終の棲家とした藤沢・みろく寺に当時の面影は全くといってよいほど残っていませんし、また、戦時中経営していたうずら園のことを知る人はほとんどいないのですが、そのことを知りたいという想いは会場の静かな熱気から伝わってきました。
 帰りに弥勒寺近くにあった山川菊栄の家の跡地に、ウッドテイストのおしゃれな家々が建っている様子を確認しました。中学校のすぐ横の場所でした。校門には大きな桜が静かに咲き誇っていました。

山川菊栄が暮らした藤沢のブックカフェで映画「姉妹よ、まずかく疑うことを習え」の上映会があります。

日時 2024年4月7日(日)14:00~16:00 ドキュメンタリ―映画上映のあと記念会事務局長山田敬子のトークの後、感想や意見交換となります。

主催・場所 シェア型本屋&カフェ BOOKY 藤沢駅北口からバス約15分、柄沢橋下車

協力 山川菊栄記念会  参加費 1500円(ドリンクつき)

予約はBookyさんに直接お願いします。

今年も国際女性デーのウィメンズマーチ東京に記念会として賛同し、参加しました。

3月8日は国連が定めた国際女性デーです。昨年に引き続き、今年も山川菊栄記念会としてウィメンズマーチ東京2024実行委員会の呼びかけに賛同しました。参加の言葉は100年以上前に、女性の自己決定権を鮮やかに言い当てた「男が決める女の問題」(1918年)の次の名言を選んで出しました。文部省が女性教育の方針を男性だけで決めることへの異議申し立てとして書かれた一節です。

「私たちはいつ私たち自身の魂を形成する権利を彼らの手に委ねたか。そして私たちはいかなる理由によって、私たち自身の意思を無視して審議し決定せられた彼らのいわゆる教育方針なるものに従って、生ける傀儡となって果つべき義務を認めねばならぬか。かく疑うことは私たちの自由でなければならない。.

私たちの若き姉妹よ、まずかく疑うことを習え。かく疑うことを知った時、そしてこの疑いをあくまで熱心に … あくまで執拗に追及することを学んだ時、そこには私たち婦人の救いの道が開けてくることを、ただそこにのみ開けてくることを覚らるるであろう。

「男が決める女の問題」『新日本』(1918・大正7年11月号)より」

中央のトートバッグは「百年の二度寝」さんによる制作

参加参加団体は現場でいただいたアピールやイベント案内などのフライヤーから去年より多様な広がりが感じられ、主催者発表の参加人数は480人でした。

早速、Youtube上にライブ映像配信されたのは、「こばと通信-声を上げる市民₋」さんです。夜の渋谷をマーチしながら、「疑うことは私たちの自由」そして執拗に追及することを学んだ時「道が開けてくる」、と100年以上前に希望を説いた山川菊栄の言葉を再びかみしめました。

WikiGap in Kanagawaオフライン参加とその副産物~山川菊栄の翻訳文献一覧表ベータ版公開

画像はWikiGap in Kanagawa実行委員会から提供いただきました。

去る3月3日に神奈川県立図書館で開催された「WikiGap in Kanagawa」オフラインイベントに参加しました。5年ぶりの対面開催ということもあり、定員20名は満席で、遠くは札幌からの遠路来場者もあり、高校三年生の男子学生を含む老若男女が相集いました。午前は、記念会から事務局長の山田が「山川菊栄ってどんな人」、山口からサイトニュースのこの一年のトピックを拾い、県立図書館の島課長から山川菊栄文庫資料について紹介がありました。山川菊栄について初めて知ったという参加者も少なくありませんでした。

午後はWikipediaのジェンダーバイヤスを変えるWikiGapの趣旨に沿って、「山川菊栄」ページや神奈川ゆかりの女性たちを中心に、ページの改訂や作成作業が、それぞれ参加者の興味に沿って行われました。8日までオンラインでも継続中です。また、ページ候補のリストも豊富に用意されています。

この活動のために県立図書館では活動支援として、担当司書の方が1階の山川菊栄記念コーナーで常設されている書籍や閉架図書など関係するものを会場に集めてくださいました。ご支援に改めて感謝申し上げます。

このイベントに後援参加する準備段階のやりとりから、山川菊栄が翻訳紹介した海外の女性たちのページで日本語以外の言語では多数存在するのに、日本語ページがない場合があることがわかりました。当日、ベテランのガチペディアさんたちが、ギルマンビアティのページを早速作ってくださったり山川菊栄翻訳との関係を書き加えてくださいました。

これに応えて、この2年ほど作業してきた「山川菊栄の翻訳文献一覧ー原著とその作者にみる国際性」を未定稿ながら公開することにいたしました。資料部情報extra-1番外発信として、PDFではなくgooglespreadシートに共有リンクをつけています。まだ不明事項も多いため随時更新していきますので、よろしくお願いいたします。

婦人問題懇話会の活動を通して、山川菊栄が実践していたフェミニズムの共同知の営みが、WikiGapを通じて広がっていくことを願っています。最後になりますが、この素晴らしい企画を実現してくださったWikiGap in Kanagawa実行委員会の皆様に心から感謝申し上げます。

2024年3月17日追記:ウィキペディアのコミュニティ情報交換の英語版サイトDiffに3月3日の参加者の一人Wasdakuramonこと門倉百合子さんがイベントレポートを通じて山川菊栄紹介も書いてくださいました。 また、ご本人のブログでも参加記を投稿してくださいました。門倉さんは、渋沢栄一記念財団で渋沢栄一のデータベース開発にも関わり、独立系司書として『70歳からのウィキペディアン』(郵研社、2023年)を著わした方です。門倉さん本当にありがとうございました。

2024年5月15日追記:『白水社の本棚』(2024年春号)に参加者の北村紗枝さんの「汗牛充棟だより13  ひなまつりにウィキペディアを書く〜WikiGap in Kanagawa 2024」https://www.hakusuisha.co.jp/hondana/ が掲載されたとの連絡が実行委員会の田子環さんからいただきました。お知らせいただきありがとうございました。

『資料部情報』No.2「雇用平等法をめざして~1978年、ある海外視察報告とその周辺」を公開しました。

山川菊栄文庫資料の紹介や最新の山川菊栄をめぐる研究情報をオープンソースで普及させていく目的で、昨年の9月から1号を公開開始した『資料部情報』ですが、このほど第2号をアップロードしました。

山川菊栄文庫資料の整理の最終局面で山田事務局長が注目した、大きな赤い〇をつけたホチキス止めの資料は、1978年当時の田中寿美子参議院議員ほか9名の女性たちが雇用平等の状況を欧州に視察した報告書でした。

田中寿美子氏は山川菊栄が労働省婦人少年局長であったときの部下であり、婦人問題懇話会をつくる当初からのメンバーでした。視察の帰国後、国際婦人年をきっかけに行動する女たちの会の例会で配布されたのがこの資料です。国際化の途上にあったとき、この海外情報は、雇用平等法をめざす女性たちに日本との落差とともに新鮮に受け止められました。

今日読んでみても、「国連婦人の10年」の中間年を前にして、日本の置かれていた状況そして、なお解消されていない賃金差別、不十分な子育て支援という現況を考えるうえで示唆に富んでいるものと思います。

視察に同行された一人で、日本婦人問題懇話会のマスコミ・日常生活分科会を率いた伊藤恭子さんにこの視察の前後のいきさつや当時の状況をインタビュー形式で伺い、付属資料としました。NHKで朝の連続ドラマの制作に携わった梶谷典子さんや、解説委員となった東浦めいさんの国連女性会議レポートをめぐる知られざるエピソードなど、貴重なお話をお聞かせいただいた伊藤さんに改めて感謝申し上げます。

東京・杉並「国際女性デー ミモザまつり」が開催されます。

3月8日は国際女性デーを記念して、各所でいろいろなイベントが開催されるようになりました。

杉並区立男女平等推進センターで、3月6日(水)から8日(金)まで「ミモザまつり」(主催・杉並女性団体連絡会)として、『青鞜』復刻版などの図書やパネルの展示と輪読会が開催されます。

パネル展示では市川房枝と山川菊栄をテーマに、また、輪読会(3月7日午後13:30~)では山川菊栄の評論集の一節をとりあげるとのことです。

連絡先はチラシ画像をご覧ください。

ひな祭りはWikigap in Kanagawaでお会いしましょう。

インターネット上の世界最大の百科事典「ウィキペディア」の女性に関する記事は男性に比べて少ないと言われています。書き手と内容の偏りが生み出している、Web上のジェンダーギャップ解消をめざし多様性のあるネット社会にしていこうという活動、WikiGap(ウィキギャップ)は、スウェーデン外務省とウィキメディア・スウェーデン協会が始めたキャンペーンで、2019年に駐日スウェーデン大使館で世界に先駆けて開催されました。

これに呼応した神奈川の実行委員会は、2019年、2021年(オンライン)と開催を重ねてきています。

今年は神奈川ゆかりの山川菊栄と山川菊栄文庫について理解を深め、山川菊栄のページとともに神奈川ゆかりの女性たちのページも充実させていこうとの趣旨で開催されます。

午前のパートでは記念会から「いま、もっと新しい山川菊栄」と題してお話することになりました。事務局長の山田敬子と世話人の山口順子が担当いたします。
定員20名と限られていますが、ウィキギャップに関心のある方、アカウントを事前に登録して、ぜひご参加ください。チラシPDF


◆日時:2024年3月3日(日) 10時00分から16時30分
◆場所:神奈川県立図書館 本館4階 学び⇔交流エリア
https://www.klnet.pref.kanagawa.jp/user…/access/yokohama/
主催:WikiGapかながわ実行委員会
共催:神奈川県立図書館 
後援:山川菊栄記念会

◆定員:20名(先着順)
◆参加費:無料◆申込み期間:2024年2月29日(木)まで
◆申し込み方法:こちらのフォームからお申し込みください。
複数人で参加希望の場合、お手数ですがお一人ずつお申し込みください。

定員になりましたので締め切りました。

◆プログラム
9:30受付
10:00開会
ミニレクチャー
・WikiGapについて(WikiGapかながわ実行委員会)
・「いま、もっと新しい山川菊栄を!」(山川菊栄記念会)
・神奈川県立図書館の男女共同参画関連資料と山川菊栄文庫について(県立図書館)
11:30-13:00 昼休み ~昼食のとり方には注意が必要です。
13:00
ウィキペディアの編集方法について(WikiGapかながわ実行委員会)
神奈川県立図書館の使い方・資料紹介(県立図書館)
調査・執筆
16:00 ふりかえり
16:30閉会

◆持ち物やウィキペディアアカウントの事前取得、昼食のとり方についての諸注意など詳しくはフェイスブックイベント内のこちらをご覧ください。