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鈴木裕子さんの新刊『フェミニズムと戦争協力』が発売されました。

東京ドーム・後楽園遊園地のある一帯は、江戸時代は水戸藩上屋敷があり、明治維新後は東京砲兵工廠という陸軍の一大軍事工場でした。戦後は水戸藩の庭園跡が後楽園となり、それ以外は遊園地・野球場と大きく姿を変え、平和な時代の恩恵をだれもが謳歌できる娯楽の場所となりました。

その最寄り駅、JR水道橋駅近くの梨の木舎は、1983年から「教科書にのらなかった歴史シリーズ」を発行し、東アジアを侵略していった日本の戦争行為とその責任について問いかけを続けてきた出版社です。第1冊目は、アジアの女たちの会が編んだ『教科書にのらなかった戦争』(1983年刊)でした。同じシリーズのPART76として、鈴木裕子さん(山川菊栄記念会世話人)が著わした『フェミニズムと戦争協力——見えなかった過去から学び、未来をつくるために』が、6月18日から刊行となりましたのでお知らせします。(296頁、定価 2,700円+税)

戦中戦後も平和主義を貫きながら評論活動をつづけたのが山川菊栄でしたが、一方で、戦時翼賛体制に次々と組していった女性団体と多くの女性リーダーたちがいました。その足跡を追った内容となっています。

女性たちが体制にやすやすと追随していった戦前から100年近くを経て、ようやく誕生した憲政史上初の女性首相は、露骨な追米姿勢とともに、改憲と戦争準備を公然と進めてしまっています。もはや平和憲法下に保障されていた基本的人権さえも危うい瀬戸際にきている状況下で、それを阻止する手がかりを、本書が世に問う意義は少なくないといえるでしょう。

同署には、藤目ゆきさんのよる解説:「未来を拓く女性史のために」や、河原千春さんによる鈴木さんへのインタビュー「問題意識はどのようにして生まれたのか」も掲載されていて、著作の背景理解を深めるよう工夫されています。

目次等の詳しい内容については梨の木舎サイトページをご覧ください。

2025年度の山川菊栄研究の動向について

昨年度に情報が得られた研究動向についていくつかご紹介します。

林葉子さんの「山川菊栄における『恋愛の自由』と『自主的母性』―公娼制度、結婚制度、母性の強制に抗する性管理政策批判の」展開」が『政治思想研究』25号(2025年5月)の特集「政治と性/ジェンダー/セクシュアリティ」に掲載されています。特集には2024年度の政治思想学会研究大会の報告4本が掲載されていますがその1本です。(政治思想学会サイト

林さんは従来の山川研究が「社会主義婦人解放論者」として位置づけることにによって、その独自性に目が向けられないできているが、山川の独自性は、国家による性管理を廃し、女性たちの「恋愛の自由」と「自主的母性」を権利として守ることが「婦人解放の最も基礎的な二大要素」と主張していることであるとしています。

長志珠絵さんによる The Possibilities of Historical Writing During Total War: Exploring Kikue Yamakawa’s Narratives of “Women’s History”(「総力戦下における歴史記述の可能性 : 山川菊栄の「女性史」をたどる」), 『国際文化学研究: 神戸大学大学院国際文化学研究科紀要』64号, 2025年9月, 1-49、神戸大学学術成果リポジトリ内(https://da.lib.kobe-u.ac.jp/da/kernel/0100497890) は、

従来「女性史」の範疇のなかで必ずしも読まれてこなかった、山川菊栄の戦時下の二作品『武家の女性』と『わが住む村』を検討して、家庭や地域のなかの働き手としての女性たちに焦点をあて、当事者の記憶を記録するエゴグラムをもとにしたパブリックヒストリーの手法に通じるものとしています。

三つ目ですが、日仏女性研究学会の年報『女性空間』43号(デジタル版のみ、2026年1月)、に「生誕135年の山川菊栄とフランス」と題して、山口順子(山川菊栄記念会世話人、オノーレ情報文化研究所)がエッセイを書いています。

横浜市のフランス山公園に移設保存されたレ・アール市場の部分遺構

父親の森田龍之助がパリのレ・アール市場での技能習得を経て、豚博士の異名をとった豚肉加工技術の専門家であったこと、これまで知られていなかった、山川菊栄の最初の翻訳と目される作品がドーデの月曜物語の短編からのもので『明星』へのデビュー作であったこと(『山川菊栄記念会*資料部情報』5号、 2025年4月)、神奈川県立図書館蔵山川菊栄文庫のなかに、フランスのフェミニストで女性労働運動家のパンフレットが見つかっていること、姉の松栄がエスペラント語に訳した菊栄によるエッセイが、パリ発行のエスペランティストの団体機関紙に掲載されていたことなどを通して、新視点を加えながらフランスとの接点を紹介しました。

なお、日仏女性研究学会(日仏女性資料センター、1983年設立)は、現在日本で最も長い活動記録をもつ女性団体であり、山川菊栄が設立した婦人問題懇話会会員からは井上輝子、伊藤恭子、日置久子、山口順子らが設立当初からの参加となっています。

山川菊栄ゆかりのアーチストたちの活動

以前、雑誌『婦人のこえ』の表紙絵を描いた小川まりさんのことをこのニュースで紹介しました。どのような経路で表紙絵が実現したかは不明ですが、室内の花の画がこの雑誌に清楚な美しさを与えていました。小川さんの血縁には女性画家がおられ、春陽会会員として現役でご活躍中です。人の精神や情念を追求する抽象画の表現者として草分けのような方で、このほど春陽会に出品されている作品を国立新美術館(東京・六本木、4月27日で終了)に拝見しに行ってきました。

右下のポストカードは小川洋子さんの「献花」という作品。



同じ六本木のミッドタウンにあるフジフイルム スクエアでは、 写真歴史博物館の企画写真展として、潮田登久子さんの「マイハズバンド」展を開催中です(6月30日まで)。神奈川県立図書館蔵山川菊栄文庫資料(整理中)のタイプライターや日記を撮影していただいたことがあり、そのときはお連れ合いの島尾伸三さんもご一緒でした。作品は写真集『改修前 前川國男設計 神奈川県立図書館』』に掲載されています(図書館新館の1階・猿田彦カフェのみで発売)。

また、長野県安曇野市立文書館では『望月桂 自由を扶くひと ― 犀川凡太郎の人生漫歩』展が8月30日まで開催中です。望月桂(1887- 1975年)は大杉栄の『漫文漫画』に挿絵を描いた画家です。そこに山川均の似顔絵も掲載されています。望月は大杉を中心に社会主義運動家たちとも交流し、グループ展「黒耀会」を開催したりしました。山川が顧問として支援した赤瀾会には望月桂の配偶者である望月ふく子も参加しています。
この6月には展覧会の図録『望月桂ー自由を扶く人』(足立 元編集, 望月桂調査団編集)が平凡社から刊行予定です。

山川菊栄は女学校時代に、叔父の蔵書を通じて福沢諭吉の『新女大学』を知るとともに、色刷りの本で古美術品の美しさに感動したと「おんな二代の記」に記されています。早くから教養として美術にも関心を深めていたことがうかがえます。また、雑誌『女人芸術』にしばしば寄稿していました。女性アーチストたちの応援者でもありました。

<参考>
大杉栄 著 ほか『漫文漫画』,黒色戦線社,ウニタ書舗 ,1972. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/12241721 (参照 2026-04-29)登録した個人送信のみとなっています。
国立国会図書館のデジタルコレクションをみるための登録先はこちらをごらんください。

6月の菊栄カフェ(読書会)は6月20日(土)に開催します。

2024年5月から始まった藤沢・Bookyさんを会場とする読書会は丸2年がたち、5月13日の「ひと箱古本市」にもいろいろな方が立ち寄ってくださいました。ありがとうございました。特製タペストリーがいよいよ登場し、村岡と山川菊栄の関係を語る媒体となって、お客様との会話がはずみました。

2026年5月13日の「ひと箱古本市」

読書会もようやく「わが住む村」を読み終えるところまで進んできました。5月20日の会合では、文中の「ファンク博士の「新しき土」」との言及があったので、検索してみると、戦時中、原節子が主演した有名な日独合作映画の映像提供サイトが見つかりました。富士の見える田植えや鎌倉の大仏などのシーンから「わが住む村」の同時代の情報空間が一気に広がりました。


次回は、6月20日(土)14:00~ 藤沢・柄沢橋Bookyさん
『わが住む村』の「戦時下の農村」P.184から読み進めます。
読み終わった後は、岩波文庫の鹿野政直さんによる解説や、加納実紀代さんの論考(山川菊栄記念会編『記録集 山川菊栄が描いた歴史』所収、当日ご用意します)を読む予定です。
いつものようにBookyさんではドリンク等各自で注文を。

人数を把握するため、初めての方は、山川菊栄記念会事務局までメールでのお知らせをお願いしています。どうぞ、お気軽にご参加ください。

山川菊栄記念会 y.kikue アットマークshonanfujisawa.com

水田珠枝さんのご冥福を祈ります

名古屋経済大学名誉教授の水田珠枝さんが4月18日、94歳で逝去されました。政治思想史、女性解放思想史の研究者で、1981年、山川菊栄記念会設立当時からのメンバーであり、「山川菊栄記念婦人問題研究奨励金」(通称・山川菊栄賞)の選考委員をされていました。また、2010年、生誕120年記念事業として行った連続学習会や記念シンポジウム「いま女性が働くこととフェミニズム」の講演者であり、2011年公開のドキュメンタリー映画「姉妹よ、まずかく疑うことを習え 山川菊栄の思想と行動」では、東海ジェンダー研究所で撮影された山川菊栄の理論を語る水田さんの映像が残っています。

ルネサンスから現代までのたゆまぬ思想の流れを知ることのできる『女性解放思想の歩み』(岩波新書、1973年初版)は2023年に20刷となっており、いまなお、フェミニズムを学びたいと思う人のための基本中の基本書として輝きを放っています。

貴重な蔵書は名古屋大学のジェンダーリサーチライブラリに寄贈され、水田珠枝文庫となっています。

ご冥福を心からお祈り申し上げます。

*シンポジウム「いま女性が働くこととフェミニズム」記録やドキュメンタリー映画についてはこちらのページをご覧ください。

山川菊栄とメーデー

山川菊栄は1951年5月24日に国立国会図書館に何冊かの自分の著作を寄贈しました。森田蔵書印があったり、両親への献辞が書かれていたりするので、1947年に母・千世が逝去した後、遺品を整理して寄贈したものと思われます。このなかで「水曜会パンフレットNo.11」(1923年刊)は、メーデーについて山川菊栄述としたもので、付録の2編が山川均の署名となっています。
 メーデーについての著述はこれが初めてではなく、雑誌『解放』に書いた「五月祭と八時間労働の話」が大杉栄主幹の『労働運動』5号(大正9年4月30日号)に抄録として転載されており、国立国会図書館デジタルコレクション収録の虐殺50年記念で出版された復刻版(1973年、黒色戦線社刊)で読むことができます(個人送信限定)。

 これによると、1886年、アメリカで起きた8時間労働要求の20万人に達する大デモ行進を機に、国際的に広がりをみせ、1889年には欧州労働団体の年中行事に採用され、1890年から毎年の恒例となり、労働政策の改善に少しずつつながっていったことを紹介しています。そして最後に次のように結んでいます([]内は活字不良での推定、一部かなづかいを現代のものに変えています)。

八時間労働が十八時間労働という光栄ある例外を作って居る日本の外のあらゆる文明社会の通則たるに至った今日、五月祭はすでに其最[善]の目的を達成したに等しい。然しながら五月祭は未だ其使命を果たし尽したとは云えない。世界の労働階級は「万人の自由」が完全に成就せらるる其の最後の日まで、飽まで勇敢に、飽まで熱心に、五月祭の戦を続ける事であろう。勿論続けなければならない筈である。
-山川菊栄「メエ・デエ(五月祭)」より

当時の日本は、18時間労働という睡眠時間以外働きどおしであったなか、1920年の第1回のメーデー開始直前に書かれた文章であり、翌年の第2回には山川自身が顧問となった女性団体・赤瀾会がメーデーに参加しました。そのようすも『労働運動』12号のなかに書かれており、デモ行進の全体の声がメーデーの歌から革命歌となっていったとき赤瀾会の会員の「ソプラノの声」が澄み渡ったとのことです。

国立国会図書館の蔵書のうち、図書や雑誌の本文や広告のなかに「メーデー」ということばが出てくる回数は1886年以降でのべ28万件以上みられます(NDL Ngram Viewerによる。リンク先のページの下のほうにグラフがでます)。戦前では1930年がピークで減少し、戦後は大きく増加しながらも1966年から減少に転じて、2003年以降はなんと二けたの数字しかでてきていません。

今年は第1回から数えて97回目。ようやく労働時間短縮が行われるようになったとはいえ、男女の賃金格差は解消されず、女性たちは低賃金のうえ本業以外に副業を奨励される一方、裁量労働制の見直しをはじめ、武器輸出、憲法改悪を公然と打ち出している首相をゲストに呼ぶブラックジョークのような状況に、いったいだれのためのメーデーだと思っているのか、と山川菊栄の怒りの声が聞こえてくるようです。

<参考>1951(昭和26)年山川菊栄寄贈の国立国会図書館蔵書(まだ、このほかにも見つかる可能性があります。探してみてください。)

  • [山川菊栄 訳]『大戦の審判』,丁未出版社,1917. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/3436126 (参照 2026-04-29)見返しに両親への献辞と本人の出版経緯の説明が巻末につく(この説明は岡部雅子氏が最初に確認した)。
  • エドワアド・カアペンター 著 ほか『恋愛論』,大鐙閣,1921. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1780332 (参照 2026-04-29)
  • 山川菊栄 著『メーデー』,水曜会出版部,1923. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1780238 (参照 2026-04-29)

Bookyさんの一箱古本市に今年も参加します。

今年も5月9日の「一箱古本市」に合わせて、読書会「きくえカフェ」の会場である藤沢のBookyさんに本を並べます。山川菊栄記念会では、過去に行っていたシンポジウムの記録集など、さまざまな出版物を出してきました。こちらのページでも取り扱っていますが、現地で手に取ってぜひお確かめのうえ、お買いもとめいただきたいと思っています。

5月の読書会は、17日(日)14:00からBookyさんで開催します。『わが住む村』(岩波文庫)の「耕地は蘇る」からとなります。参加は無料ですが、Bookyさんにお好きな飲み物や食事のご注文を各自でお願いしています。
初めてのかたは記念会までメールでご連絡いただければ幸いです。お気軽にご参加ください。お待ちしています。
y.kikueアットマークshonanfujisawa.com

ミモザフェスティバルが東京両国で開催されます。

日本の女性の生き方を三代にわたって描く日仏合作演劇「ミモザウェイ」(日仏女性の人権架け橋ミモザ実行委員会主催)が進化して東京・両国のシアターXで「ミモザフェスティバルー私たちの道、【声を挙げる 表現する 連帯する】」として、3月6日から8日まで開催されます。朗読や音楽劇など多彩なプログラムとなっています。ほとんど販売完了ですが、まだ、6日の19時と7日の14時の公演のみチケットがあるようです。お申し込みをお急ぎください。https://peatix.com/event/4680151

ミモザフェスティバル

今年の3月8日・国際女性デーに向けて

先日、御案内したように、3月8日、ドキュメンタリー映画『姉妹よ、まずかく疑うことを習え』の上映会(主催「さざなみ企画」)が葉山町福祉文化会館(葉山町堀内)で開催されます。、これについて、『タウンニュース』(逗子・葉山版・2月13日付)で採り上げていただきました。
https://www.townnews.co.jp/0503/2026/02/13/824677.html

また、3月8日は、恒例の東京ウィメンズマーチの企画が今年もあるとのことです。山川菊栄記念会では、毎年のように賛同団体となって、エールを送っています。

タウンニュース・藤沢版で山川菊栄を取り上げていただきました。

関東地方でも積雪が予報される8日の総選挙投票日を前に、2月6日付、『タウンニュース』藤沢版で山川菊栄をご紹介いただきました。山川菊栄記念会の事務局長山田敬子が取材を受けたもので、戦後まもなく、初の女性の参政権行使をめぐる山川菊栄の思いがよく表現されている言葉とともに記事にしていただきました。