名古屋大学ジェンダーリサーチライブラリ・ブックセミナー「未来からきたフェミニスト 山川菊栄と再会する」が開催されます。

先日の『毎日新聞』(9月9日付)書評欄に花束書房から出た『未来からきたフェミニスト 北村兼子と山川菊栄』の広告がみられましたが、このほど、出版記念として山川菊栄に焦点をあてたイベントが、10月22日(日)、名古屋大学ジェンダー・リサーチ・ライブラリで開催されます。

対面とオンラインのハイブリッド方式での開催です。参加無料ですが事前申し込みが必要です。

参加登録フォームは、https://ssl.form-mailer.jp/fms/dc899353796604 へ。先着順での締め切りとなります。お早めにお申し込みください。す。

関東大震災で被災した山川菊栄の手紙が神奈川県立図書館で展示されています。

ちょうど1世紀前の関東大震災の日、9月1日が近づいてきました。

ちょうど1世紀前の関東大震災の日、9月1日が近づいてきました。

 以前お知らせした神奈川県立図書館の展示「関東大震災100年 神奈川県の被害と復興」には、東京で被災した山川菊栄が母と姉・松栄にあてた手紙が書き起こしとともに展示されています。拡大コピーと書き起こしが読みやすく展示されており、あわせてそのときの避難経路も地図に示されています。菊栄と学齢期を迎えようとする一子・振作は、東京三田の慶應義塾大学そば、札ノ辻で被災し、バスや馬力という乗り物を乗り継いで、夕方、大森の自宅まで帰り着きます。書簡は9月3日付ですが、2日の午後から朝鮮人襲来のデマがあったこと、半鐘が鳴り響き、異様な空気であったことなどを書き伝えました。後年の名作「おんな二代の記」にもこの大震災の体験は「天災と人災」の章でさらに克明に記されており、貴重な歴史的証言となっています。9月2日午後に馬に乗った兵士が慌ただしく触れ回るデマを聞いても、合理的な思考とともに冷静さを保ちながら過ごしていく山川夫妻のようすがうかがえます。

 菊栄は、翌1924年「大試練を経た婦人の使命」(『山川菊栄集』第3巻251頁、初出は『大正一三年婦人宝鑑:家庭百科全書』大阪毎日新聞社編纂発行、国立国会図書館デジタルコレクション)のなかで、「黒船に怯えた幕府時代の日本と、世界の大国の班に列する今の日本との間に、果たして何ほどの思想的進歩があったかを怪しまずにはいられなかった。いかに不用意の際に巧妙な流言が行われたにせよ、日本人が一般的にいま少しく人命の貴重さを知り、人道の何足るかを心得ていたならば、あれほどの残虐は行われなかったであろう。褊狭なる愛国主義。封建的な尚武思想、排他的な島国根性! これらに禍された日本人の教養は、今日一等国をもって誇る国民に中に、敵の髑髏をもって装飾品とする蒙昧人を多く産出するようなこととなったのである」と、朝鮮人虐殺に加担した人々を批判しています。また国民全体の道徳的欠陥や教養の低さについて猛省を促しています。そして、震災直後に菊栄も加わって結成された東京の婦人団体連合会が、甘粕大尉の虐殺事件に対して人道の名において抗議を発表したことを「まことに意義あること」とし、患者の看護にあたった看護師たちの勇気をたたえ、「人の生命を奪う代わりに生命を与えることを本分とする婦人が、今後、今回のごとき残虐行為を防止すべく、平和と人道との名における大々的な運動を起こさねばならぬことは当然であろう」と書きました。

 虐殺された朝鮮人の人々の数はまだ正確にわかっていませんが、山田昭次氏が在日本館等大震災罹災朝鮮同砲慰問班による調査報告をもとに再計算した数値では、神奈川が最も多く3999人、東京1781人、埼玉488人、千葉329人、群馬34人、栃木8人、茨城5人となっています(2023年高麗博物館企画展図録「関東大震災100年 隠蔽された朝鮮人虐殺」9頁・展示は12月24日まで)。このほかにも中国人や障がい者、労働運動者、社会主義者が犠牲となりました。大杉栄、伊藤野枝、橘宗一3人の暴行致死も、金子文子と朴烈の不当逮捕と獄死も、関東大震災の混乱に乗じた軍や警察当局の非人道的な蛮行が原因です。

 9月2日の午後にデマを伝えながら鳴らされていたという半鐘は、サイレンや有線放送、メールなどに置き換わっていき過去の遺物だと思われがちですが、まだ消防団の建物に付随して残っている地域もあります。100年前のような目的で鳴らされることが二度とあってはなりません。

神奈川県立図書館の展示は今年末までですが、11月に展示替えが予定されています。詳細は図書館まで(電話代表・045-263-5900)。

女性労働協会サイトが「行政資料デジタルアーカイブ」を再開

ちょうど一年ほど前、山川菊栄が初代局長を務めた旧労働省の婦人少年局等資料約3000点について、厚生労働省主導により譲渡計画があることがわかり、記念会では、国立公文書館ならびに国立国会図書館への移管を要望しましたが、譲渡は去る11月に実施され、国立女性教育会館を主なる譲渡先として、ほかに国立国会図書館、昭和館などの公的機関や個人へ分散して所蔵されることとなりました。神奈川県立図書館でも所蔵する婦人少年局資料の欠本を補うため譲渡を受けています。

そして、今年の3月には、旧女性の仕事と未来館以来、デジタルファイルで提供されてきた「行政資料デジタルアーカイブ」も突如閉鎖となってしまいました。このことについても、記念会は女性労働協会サイトでの継続公開と、デジタルデータ一式を国立公文書館と国立国会図書館へ、女性労働協会からの法人としての寄贈を要望しつづけました。
このほど6月12日に、サイト上でこの「行政資料デジタルアーカイブ」の再開が告知となりました。https://www.jaaww.or.jp/topics/5744/ <2023年7月4日確認>


記念会が要望してきたことであり、多くの利用者にとって待たれた再開です。

旧労働省婦人少年局資料は、とりわけ戦後に初めて開始された、国による女性の人権状況を改善する政策の資料群と考えます。同じものを、国立女性教育会館や国立国会図書館に図書資料として入れる意味と、国の政策の証拠として国立公文書館法に基づき、同館に入れる意味は全く異なります。
厚生労働省には、一式を移管することを求めてきましたが、これについては残念ながら実現しませんでした。


国立公文書館の「公文書の世界」というデジタル展示では、厚生労働省から献血普及のための「マスコットキャラクター」が広報資料として移管され、中性紙箱に保管されているとあります。
https://www.archives.go.jp/exhibition/digital/koubunshonosekai/contents/42.html
ぬいぐるみの「けんけつちゃん」は移管されても、山川局長時代の旧労働省婦人少年局の行政資料は一切移管されませんでした。

書評が掲載されました

女のしんぶん』(2023年6月25日・第1297号)に『未来からきたフェミニスト 北村兼子と山川菊栄』の書評が掲載されました。「社会を変えようとした2人の女性」と題し、山川菊栄記念会世話人の中村ひろ子さんが書いてくださいました。

花束書房の伊藤春奈さんが編集した新しい視点に満ちた諸論考は気鋭の若い人々によるもので、中村さんは、山川菊栄がフェミニストではない、という否定説に対して、否定することはできないだろうと強調されています。

関東大震災100年

神奈川県立図書館では、企画展示「関東大震災100年 神奈川県の被害と復興」が開催中です(12月13日まで)。
山川菊栄が被災後、母千世にあてた手紙も山川菊栄文庫関連資料から初披露。去る6月2日には朗読会「明日へ」も開催され、その手紙が読まれたということです。

陸軍の甘粕正彦大尉らによる大杉栄、伊藤野枝、大杉の甥・橘宗一の虐殺のあと、山川一家も狙われている可能性があるとの助言で、振作を連れて兵庫県垂水に逃れていきました。
逮捕ではなく直接有無を言わせずに命を狙う国家的テロ、現代でも世界のどこかで起きている、山川一家も直面したそのことの暴力性を改めて問わねばなりません。

花束書房の新刊『未来からきたフェミニスト 北村兼子と山川菊栄』

5月末に『未来からきたフェミニスト 北村兼子と山川菊栄』が花束書房さんから
配本予定(336ページ、税別2300円)とのことです。版元ドットコムへ

花束書房さんからの依頼を受けて、記念会の事務局長山田敬子が
「山川菊栄の思想を明日につなぐ」を執筆しました。
また、山川菊栄文庫の資料整理について、作業にあたってきた
山田を含む三人が座談会に参加しています。

北村兼子と山川菊栄に関する、若い世代の清新な視点がたくさん
盛り込まれ、現代日本の閉塞感を破るパワーを提供する、
とても楽しみな一冊となっています。

どうぞ皆様、ご予約をお願いいたします。

伊藤セツさんの最新刊と情報発信力


2020年に開催した山川菊栄生誕130周年記念シンポジウムでも御登壇いただいた伊藤セツさんが『国際女性デーの世界史―起源、過去、現在、未来―』(御茶の水書房)を刊行されました。帯のめだつところに山川菊栄等の日本で初めての国際女性デ
ー開催に言及していただいています。

伊藤さんは記念会の井上輝子代表が生前企画した、伊藤さんのご著書
『山川菊栄研究―過去を読み未来を拓く』(ドメス出版)の連続勉強会にも快くご参加くださいました。

新刊と同時に、ご自身のブログだけでなく、Webサイト「コスモポリタン」(3月6日付、Maya Thornによるインタビュー記事)からもミモザが添えられたご自身の似顔絵とともに、国際女性デーの経緯や意義を情報発信されています。

シニア女性映画祭10年の記念誌



2023年3月11日と12日に、豊中市で開催された第11回シニア女性映画祭では、山上千恵子監督の山川菊栄ドキュメンタリーが上映されました。また、2012年から2021年までのシニア映画祭10年の開催記録を詳細にまとめた記念誌もシスターウエイブスから発行になりました。
映画祭に込められた関係者のみなさまの熱情あふれる1冊です。入手先は、sister-waves @ qc.fem.jp

シニア映画祭の会場で山川菊栄の写真集や『いま、山川菊栄が新しい!』もたくさん購入いただきました。いずれもこのサイトを通じてご購入いただけます。お気軽にご連絡ください。y.kikue @ shonanfujisawa.com  (メールアドレスはいずれもアットマーク前後をつめて送信してください)

『東京新聞』横浜・神奈川版に神奈川県立図書館展示が紹介されました。

2023年3月5日の『東京新聞』横浜・神奈川版に現在神奈川県立図書館本館1階で行われている図書の企画展示を紹介する記事が「自分らしく生きる・考える」として掲載されました。合わせて山川菊栄文庫資料展示についても書かれています。記事は国際女性デー特集として組まれ、川崎市議会でこれまでで唯一の副議長を務めた菅原敬子さんへのインタビューも載っています。

Web記事はこちらから。