『明星』に青山菊栄の翻訳小品が掲載されていました。

山川菊栄が、森田菊栄として生まれてから135年がたとうとしています。東京府立第二高等女学校在学中に、母方の祖父であり水戸藩藩儒であった青山延寿の跡をつぎ、青山菊栄を名乗りました。父親の事業の失敗から家族の経済的な状況もあって、女学校卒業後は一度国語の教師をめざしますが、すでに古典の多くを読破していたため学習レベルに飽き足りず、麹町近くの教会の成美女学校で英語を、そして同じ教会で開催され始めた、女性の作家育生のための閨秀文学会に参加します。しかし、ほどなく閉じられてしまいます。その会を通じて与謝野晶子や平塚らいてうとも知り合い、馬場孤蝶に師事してその自宅で大陸文学、すなわちフランスやロシアの自然主義文学を英訳から学んでいきました。

その成果ともいえるドーデ著「月曜物語」からの2作品の梗概翻訳が『明星』に掲載されていたことを確認し、論考としてこのほど『資料部情報』5号で公開しました。馬場孤蝶の和訳指導プロセスそして多感な青春時代が日本の繰り返される対外戦争の時期と重なり、家族の情報環境のなかで、平和主義、人道主義の原点がはぐくまれていたことを考察しました。ご一読いただければ幸いです。(山口順子)

神奈川大学公開講座で山川菊栄『武家の女性』を精読するコースが募集中です。

神奈川大学みなとみらいエクステンションセンターで「戦前・戦後の女性運動家 山川菊栄を読む【対面講座】『武家の女性』(岩波文庫)を精読する」が3月3日から募集が始まっています。6月に5回にわたって精読していくコースで、講師は三谷博東京大学名誉教授が務めるとのです。

Web上のbookshopでの投票をみると、最も読まれている山川菊栄の作品は『武家の女性』があげられている場合が多く、根強い人気のある作品です。詳しくは下記リンクでお確かめください。
https://www.ku-portsquare.jp/site/course/detail/4609

国立公文書館デジタルデータベースで山川菊栄旧蔵労働省婦人少年局資料が公開となりました

このほど、山川菊栄記念会から国立公文書館に寄贈した山川菊栄旧蔵の文書65件が、デジタルデータベースに搭載となり、検索可能となりました。初代労働省婦人少年局長として指揮をとった調査の報告書が主ですが、亡くなる年まで婦人少年局が送付を続けていたことを示す資料もあります。

女性官僚としては初の寄贈文書であり、所蔵は筑波の分館ではなく、東京北の丸(東西線竹橋駅)の国立公文書館本館となりましたので、閲覧申請でその場でどなたでもご覧になれます。

いくつかの文書には「山川蔵書印」が押されていたり書き込みもある、いわゆる本人の手択本となります。正誤表の数値を丁寧に書き写して正確性を保とうとしており、統計調査資料へのこだわりが見受けられるところもあります。

資料の来歴は、神奈川県立かながわ女性センターを経て神奈川県立図書館所蔵となっていましたが、重複本にあたるものについては先だっての取り決めにより、山川菊栄記念会が譲渡を受けたもので、それらを国立公文書館に寄贈したものです。経緯についても文書の詳細説明に書かれており、間違えられやすい労働省婦人少年局の「婦人労働課」、「婦人課」、「年少労働課」の3課の説明とともに、組織の変遷も合わせて記されています。

2年前からこのニュースでも報告してきた労働省婦人少年局資料の厚生労働省による譲渡事業の問題点、全国のどこに分散所蔵されたいったのか不明であることは残るままですが、記念会としては、今後も注視していきたいと思います。