10月22日のきれいな秋晴れの午後、セミナーに参加しました。地下鉄名古屋大学駅からすぐのところに、一軒家風のカフェを併設した愛らしいライブラリがありました。大学構内の奥まったところにあるかと思いきや、幹線道路沿い、付近には飲食店も多く、コミュニティに開かれた位置にある大学付設の日本有数のジェンダーライブラリだとわかりました。
名古屋は2年前に急逝した井上輝子記念会代表の縁の地でもあります。東海ジェンダー研究所の理事を務めながらその研究所の活動をとても大切にしていました。井上さんを偲びつつ、GRLの水田珠枝文庫の貴重書の棚を拝見しました。
ブックセミナーは、第1部で、豊田真穂さん「生理休暇を考える」、高柳聡子さん「コロンタイの翻訳者としての山川菊栄」、趙書心さん「クィアを翻訳する菊栄」の3名の報告があり、花束書房の本を補足し、発展させた内容で、山川の今日的意義を語られました。
第2部は、「ライブラリで出会う女性の蔵書コレクション―「山川菊栄文庫」「水田珠枝文庫」の継承と活用」とのテーマでの対談で、神奈川県立図書館の島香織さんが神奈川婦人総合センター時代からの山川菊栄文庫が、県立図書館の再整備計画の中で、どのような位置づけになっているか、また文庫資料について、山川菊栄記念会の協力を得て、利用に向けた整備を進める予定と話されました。記念会の山口からは、山川菊栄文庫資料の全体像を示し、そのなかからコロンタイやサンガーの宣伝チラシ、パンフレットなどを紹介。またレスター・ウォードの『ピュアソシオロジー』の第2版が寺田鼎、堺利彦を経て山川菊栄へと渡っていること、1923年にベーベルの『婦人論』が山川菊栄訳としてアルスから出た初版が、関東大震災を経て再刊された経緯などを紹介しました。青木玲子さんは、NWEC、東京都をはじめ各地の男女共同参画センターなどでの経験について、また名古屋大学GRLには構想の当初から、東海ジェンダー研究所として関わってこられたことから、女性関連資料をアーカイブとして残すこと、またそれを活用することを、イギリスなどの事例を交えて話されました。
改めて、このセミナーを企画いただいた花束書房の伊藤春奈さんとGRLの林葉子教授に深謝申し上げます。
全体概要は、後日、名古屋大学のGRLからの報告にも出る予定です。発行後こちらのニュースでもお知らせします。
花束書房さんの『未来から来たフェミニスト-北村兼子と山川菊栄』の出版を起点として、山川菊栄を次につなげていこうという若い世代の方々が沢山おられることに大きな力をいただきました。記念会では、山川文庫資料の整理、公開に向けて、よりよい方向性を求めつつ、今後とも県立図書館に協力してまいります。