山川菊栄記念会の新しいリーフレット誕生と「名言エッセンス」(『資料部情報』第4号)発行のお知らせ

昨日6月29日に終了しました、山川菊栄誕生の地でもある東京・千代田区の男女共同参画センターMIW企画による、パネル展(「女子の学びを切り拓いた女性たち~小説『らんたん』の登場人物たち」)ですが、『らんたん』の作者柚木麻子さんの講演会「シスターフッドのこれまでとこれから」も22日に開催され、オフライン・オンラインともに大盛況でした。会場で講演会に参加しました。

柚木さんは、女性たちをめぐる環境の変化の中で、「シスターフッド」が受け入れられてきたことをまず指摘されました。一方、その中で感じ続けてきた、日本の女性に対する変わらない「ジェンダーバイアス」についてもたくさんのエピソードとともに言及、でもシスターフッドで、しかも自然体で、それを乗り越えていく道も示唆されました。講演は、テンポの良い柚木ワールド全開のお話を堪能することができました。また終了後、柚木さんと『らんたん』における山川菊栄について、個人的にお話をする機会を得ましたが、登場人物の中で山川菊栄が「一番人気」であることなどをお話してくださいました。

このイベントに合わせて、記念会では新しいリーフレットを作成しました。表に現代的課題に通じる名言の数々をセレクトして配置し、裏には34回にわたる山川菊栄賞受賞作品を二本の柱にして、山川菊栄の生涯とともに記念会について説明しています。こちらからPDFでダウンロードできます。自由に配布したり、表裏を横に並べてA3版のポスターとしてお使いいただけます。ぜひご利用ください。

また、この名言の解説をまとめた「山川菊栄の名言エッセンス」『資料部情報』第4号もアップロードしました。1918年~1972年まで10点の名言について最新研究とともに、解説をつけました。新出の文献「維新の申し子」(1972年)も紹介しています。

『生誕130周年記念シンポジウム「山川菊栄、いま新しい」記録集』のチラシもできています。記念会で購入希望を受け付けていますので、どうぞよろしくお願いいたします。

追悼・有賀夏紀さん

『アメリカ・フェミニズムの社会史』(勁草書房、1989年)で第8回山川菊栄賞を受賞され、のちに山川菊栄賞選考委員、2022年から世話人として活躍された埼玉大学名誉教授の有賀夏紀さんが闘病生活の末、去る3月7日に逝去されました。6月20日、偲ぶ会として山川菊栄記念会世話人会で集まりました。

有賀夏紀著『アメリカ・フェミニズムの社会史』
第8回山川菊栄受賞作『アメリカ・フェミニズムの社会史』(勁草書房、1989年)

有賀さんはかつてアメリカ学会会長も務められたほか、米国においてもアカデミズムのネットワークをたくさんおもちでした。2019年には、アメリカ芸術科学アカデミー外国人名誉会員にもなっています。

山川菊栄記念会の活動では、山川菊栄賞選定委員会での交流を気に入って大切にされていて、ともすれば議論で窮屈になりがちな会合の場をもちまえの明るさで盛り上げてくださいました。

山川菊栄のドキュメンタリー映画の翻訳もされていた語学力を、この記念会サイトの英語版で発揮していただくことになっていましたが、ご病気のため断念されたことは、さぞかし無念であったことかと推察されます。

改めて心からご冥福をお祈り申し上げますとともに、有賀さんの想いを継承しながら、このサイトの充実と情報発信に努めていきたいと思います。

*外部リンク:一橋大学ジェンダー社会科学研究センターサイトで、ありし日の有賀さんへのインタビュー動画が公開されています。