「隠れ 水戸水脈」と題して、徳川慶喜、渋沢栄一、菊池寛、山川菊栄、林芙美子の5人を「日本の100人」に推薦する文章を書かれたのはフランス文学の鹿島茂さんです。以前、森まゆみさんとの『東京人』の誌上対談で山川菊栄の若き日のポートレートを激賞されたとのことですが、今回も「地に足のついたフェミニスト」と強力な「推し」が示されています。
このなかで、菊栄が、麹町四番町の隣に住む祖父・青山延寿の薫陶を受けたと書かれています。水戸藩藩儒の青山延寿の長兄で、青山延光の家は総裁を務めた藩校弘道館の前からまっすぐ続く田見小路にあり、光圀のブレーンであった朱舜水を霊を祀る堂の向かい側に位置していました。関ケ原の戦いのあと転封された佐竹家中であった青山家は水戸に残り、代々その祠堂を守る役目でした。いまはNTT東日本水戸支局前に小さな朱舜水の像がありますが、青山家との関係を知るよすがは見つけられないのです。
山川菊栄はかつて当代きっての評論家として、『婦人公論』はもとより、いわゆる月刊総合誌への執筆も多く『太陽』『中央公論』『改造』『雄弁』『世界』などとともに、『文藝春秋』にも随筆を書いたり座談会に参加したりしています。長くなるので記事のいくつかの紹介は続編へ。