「知」の巨人100人に選ばれた山川菊栄・山川均-そして戦前からの平凡社との関係

平凡社新書『近現代日本思想史「知」の巨人100人200冊』(2023年2月刊)表紙と帯

昨年の『文藝春秋』8月号特集、日本人100人に山川菊栄をフランス文学者鹿島茂氏が推してくださったことをこのニュースで書きました。それより少し前に刊行の、平凡社新書『近現代日本思想史「知」の巨人100人200冊』(2023年2月刊)にも、大正デモクラシーのなかで山川菊栄、山川均が選ばれています。監修は東京女子大学丸山昌男比較思想研究センターです。

知の巨人たちの著したそれぞれ代表的2冊も選ばれており、『おんな二代の記』と鈴木裕子編『山川菊栄 評論集』(岩波文庫)が藤野裕子さんによって推薦されています。山川均の2冊は『社会主義への道』と『山川均自伝』が選ばれており、同じく藤野さんによるものです。

100人のうち女性は5人だけで、平塚らいてう、山川のほか、高群逸枝、上野千鶴子さん、そして中根千枝さんの名前が見られます。

また、巻末にアーカイブ紹介があり神奈川県立図書館山川菊栄文庫も記されています。現在、図書館のOPAC検索できるようになっていますが、新収蔵庫改修工事のため検索はできても閲覧ができませんのでご注意ください。令和8年度以降予定の新収蔵庫オープン後には、山川菊栄記念会も協力して進めてきた日記や受領書簡などの公開も徐々に行われる予定です。

 この本で夫婦で選ばれたのは山川の二人だけですが、平凡社も山川夫妻ともにゆかりある出版社です。戦前では、赤い表紙が賛否を生んだ『社会思想全集』は文化学会が編集し、平凡社が出版しました。1928年刊の第11巻にベーベル著山川菊栄訳『婦人論』が入っています。保存機関の大変少ない付録の『社会思想月報』5号にはこの刊行の顛末が記されており、予告では山川均の「唯物論と経験批判論」だったが訳者の支障が起こったため、進行を中止し第5回配本の内容を変えて当初10月予定だった「婦人論」となった、とあります。「我国女流評論家」の第一人者として山川菊栄はベーベルの訳者として最適任者と紹介しています。また、戦後では代表作『おんな二代の記』が1972年に平凡社の東洋文庫に入りました。

推薦されている本のうち『おんな二代の記』(『山川菊栄集9巻』所収)、『社会主義への道』 (『山川均全集20巻』所収)『山川均自伝』は、いずれも国立国会図書館デジタルライブラリから個人配信でスマホでも読むことができます。夫婦で著作集をもつのは山川菊栄・均、そして岡本かの子・一平くらいでしょうか。